コーポレート・ガバナンスとは|目的と注目の背景・強化する方法をわかりやすく解説

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コーポレートガバナンス
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「コーポレートガバナンス」について投資家や上場企業会社勤務であれば聞いたことがあるかもしれませんが、一般的にはあまり馴染みがない言葉かもしれません。日本では、アベノミクスにおける「第三の矢」としての成長戦略における重要テーマとして近年急速に整備されました。

コーポレートガバナンスの目的やメリット・デメリット、コーポレートガバナンスを強化するために選ぶべき社外取締役について説明します。

コーポレートガバナンスとは?

コーポレートガバナンス(Corporate Governance)とは、「企業統治」と訳されますが、「会社は株主のものである」ということを前提に経営を監視する仕組みです。金融庁と東京証券取引所は、2014年8月から2015年3月にかけて「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」を開催し、「コーポレートガバナンス・コード」を策定しています。

コーポレートガバナンス・コードの原案では、「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協議」「「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」という5つの基本原則から構成されています。

参考:東京証券取引所|コーポレートガバナンス・コード

コーポレートガバナンスの目的

コーポレートガバナンスは、「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため」という想いで作られています。「透明・会社が株主・顧客・従業員・地域社会などの立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」を実現することが目的です。

企業は、正しい決断を行うことにより企業が健全な形で成長することが大切です。しかし、経営者が会社を自分の好きなように運営することにより事業で失敗したり、業績が悪い時に粉飾決算をしたりすれば、投資している株主の資産を減らすことになりかねません。

そればかりか、影響力のある大企業で不祥事が起れば、市場全体を巻き込んで経済的な混乱を招くことになってしまいます。このような事態を避けるためにも、企業をきちんと監視するという目的でコーポレートガバナンスが制定されたのです。

日本では、安倍晋三首相によるアベノミクスの経済再生計画の柱となっており、株価の押し上げなどを狙い近年急速に整備されていきました。

(新陳代謝とベンチャーの加速)
古くなった設備・資産を大胆に処分し、型遅れの設備を最新鋭のものに置き換える。もう一度世界のトップに躍り出るための研究開発を加速し、成長分野に資金・人材・設備を積極的に投入する。思い切った事業再編を断行し、企業として、産業として新陳代謝を促進する。

こうした形で企業経営者が動き出せば、日本の企業が再び元気を取り戻し、設備投資の増加や生産性の向上を実現することを通じて、魅力的な新製品・サービスを次々と生み出し、国際的な競争に勝ち抜き、世界の市場を獲得していくことが期待できる。

企業経営者に大胆な新陳代謝や新たな起業を促し、それを後押しするため、設備投資促進策や新事業の創出を従来の発想を超えたスピードと規模感で大胆かつ強力に推進する。加えて、株主等が企業経営者の前向きな取組を積極的に後押しするようコーポレートガバナンスを見直し、日本企業を国際競争に勝てる体質に変革する。
引用元:首相官邸|日本再興戦略-JAPAN is BACK-

コーポレートガバナンスが注目された理由

日本では、バブル崩壊後に国内大手企業やその子会社の間で不祥事が多発しました。不祥事の内容としては粉飾決算や横領、労働基準法に抵触するような雇用形態といったものに代表されますが、それが公になることでその企業の株価は暴落してしまいます。

上場企業の株主は、基本的に投資先の企業内部について知ることができる機会がないので、運悪くこのような企業に投資をしていた人は大きな損失を抱えることになってしまいました。また、このようなことが続けば株を購入(投資)しようと思う人は減り、活発な経済活動から遠ざかってしまいます。

そのため、株主を保護するために経営を監視するコーポレートガバナンスは注目されるようになり、きちんとそのルールにそって運用されることにより株主は安心して投資ができるようになったのです。

アベノミクスにおける「第三の矢」の成長戦略における重要テーマとして、近年急激にコーポレートガバナンスは整えられ、株価の押し上げにも寄与していたといえるでしょう。

コーポレートガバナンスと内部統制との違いは?

企業会計審議会(金融庁)による「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、内部統制について以下の通り説明しています。

内部統制の目的と仕組み

内部統制は、経営者を含む組織全体の従業員が遵守すべき社内ルールや仕組みで、法律や職業倫理を企業が守ることを目的としています。たとえば情報漏洩をしないためにPCを持ち帰る際のルールを決めたりすることも内部統制にあたりますが、「財務報告の信頼性」で正しい会計処理ができているかが一番着目されるようです。

内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。

2001年以降、アメリカで大手企業による不正が横行したことにより、決算書のチェックだけではなく普段からルールに則り財務を行う大切さが謳われようになりました。

その結果、アメリカで決算書が適切に作成されることを目的として制定された「SOX法」と呼ばれる企業改革法が作られ、その後日本でも内部統制報告制度「J-SOX」が導入。

このJ-SOX法では、内部統制報告書の提出が義務付けられており、企業は事業年度ごとに内閣総理大臣に自社の内部統制について報告書を提出しなくてはいけません。

社内向けか・株主向けかの違い

社内のルールに目を向けた内部統制は、株主保護を意識したコーポレートガバナンスとは目的が異なります。しかし、いずれも健全な企業体質を維持するために重要な役割を果たしていますし、きちんとルールを守って健全な経営をすることが結果的に株主保護に繋がるのです。内部統制とコーポレートガバナンスは同時進行でやるべきといえるでしょう。

参考:金融庁|財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並び に財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する 実施基準の改訂について(意見書)

コーポレートガバナンスによる効果とメリット

コーポレートガバナンスに取り組むことで得られる効果は以下の通りです。

企業価値の向上

コーポレートガバナンスを遵守することにより、企業価値が向上することは大きなメリットといえます。きちんとルールに則り運営できている企業という評価となれば信頼も増し、株を購入したいという投資家も増えるでしょう。

そうなれば株価を押し上げる要因にもなりますが、株価というものはその企業の将来性を示したものでもあるので、企業としても非常に気にするポイントです。株主を大切にすれば結果として株価が上がるという良い循環を作ることができるので、メリットは大きいです。

財務体制を強化できる

また、株価を安定させるために中長期的な戦略を立てながら企業運営を行うことになり、結果として財務体制を強化することができます。社外取締役などで税理士や公認会計士などの専門的な意見を取り入れることにより、透明性が高い財務状況となれば、金融機関などからの融資も受けやすくなるでしょう。

同業他社への競争優位性を示せる

経営戦略の本質はライバル企業との『差別化』と『優位性』の提示です。他社に対して常に競争優位性を持ち続けなければ、事業の継続が難しいのが資本主義の世界です。

そのため、下記の4点が主に重視されます。
1. コスト
2. リーダーシップ
3. 差別化
4. 集中戦略 など

商品・サービス比較の際、性能が同じならより低コストのサービスが選ばれますので、低コストの商品開発・提供を実現する企業に軍配があがります。ただ、中小企業において限られた資源・人材・資金のなかで大企業を相手に戦いを挑むのは至難の技です。そこで、差別化戦略が重要になります。

経営者の判断を実行するためには、思想・理念などが企業の末端に至るまで浸透している必要があり、差別化・集中して行う戦略を実行するためのツールとして、コーポレートガバナンスが有効に働くのです。

経営陣によるトップダウンの抑止

バブル経済崩壊後の日本ではコーポレートガバナンスが徹底されておらず、一部の経営陣が独断で進めた結果、企業の不祥事によるレピュテーションリスクの増加、ステークホルダーの損失が大きかったと言えます。

1980年後半から1990年代初頭にかけ、BCCI銀行、マクスウェルなど、大企業の不祥事が相次ぎ、FRC、ロンドン証券取引所を中心に、キャドベリー委員会が設置されたのは、大きなニュースになりました。企業経営が適切に行われているか、不祥事を起こす可能性を監視するうえで、コーポレートガバナンスは大変重要です。

健全な経営の実現とは

企業が健全に、長期的な経営を続けていくには、組織全体で同じビジョンを共有していることが重要と言いました。コーポレートガバナンスは、企業理念から外れることなく、全ての従業員が企業価値の創出に貢献することができます。

つまり、企業は利益のためだけでなく社会貢献という側面からも運営されなければならず、需要に見合った商品・サービスを、利益先行という偏った経営にならないよう、適切に運営される必要があります。

株主以外のステークホルダーの保護と利益向上

株主以外のステークホルダーとは、従業員、債権者、地域社会をはじめとした、顧客・取引先などに関わりのある利害関係者のことを指します。企業成長は様々なステークホルダーによる資金・人材・モノの提供によって支えられており、企業はステークホルダーと適切な関係構築が重要です。

つまり、個々のステークホルダーの権利や立場を尊重する文化や、企業風土を構成する意味意味でも、リーダーシップを発揮していかなければなりません。全てのステークホルダーの権利や利益を保護することで、企業の信頼向上や金融機関から融資、将来的な経営戦略を描きやすくなるメリットがあります。

コーポレートガバナンスのデメリットとは

それではコーポレートガバナンスのメリット・デメリットについてそれぞれ紹介します。

スピード感のある意思決定は困難に

コーポレートガバナンスにより、株主を気にしたり、社外取締役の意見を取り入れたりすることにより、スピード感のある意思決定はできなくなります。このスピード感が無くなることにより、ビジネスチャンスを逃したり、コーポレートガバナンスを遵守する必要がないオーナー企業に負けてしまったりという可能性もあるでしょう。

中長期的な計画に無関心なステークホルダーが増える

また、株主やステークホルダーは目先の利益に走りがちで、中長期的な計画に無関心という場合もあるようです。そうなると、「短期的な利益を追求しなければ株主が逃げてしまうのでは」という思いから、大胆な企業活動ができなくなるという危険性もあります。

コーポレートガバナンスの対象企業

コーポレンとガバナンスは全ての会社が守る必要があるのでしょうか。

基本的には上場企業が対象

コーポレートガバナンスは、基本的には上場企業が対象になっています。現在、ほとんどの上場企業がコーポレートガバナンス・コードに則り運営を行うようになりました。たとえば、社外取締役の設置や「コーポレートガバナンス等に関する報告書」の提出が必須となっています。

コーポレート・ガバナンスに関する報告書の特徴
当該報告書は、投資者にとってのコーポレート・ガバナンス情報の比較可能性の向上を念頭に置いています。

従来の決算短信でのコーポレート・ガバナンス関連情報の開示は、その開示内容が各社の裁量に委ねられ、また、他の決算情報と一緒に開示されていたため、投資者が各社のコーポレート・ガバナンス体制について、独自に比較・判断することが難しい状況であったと考えられます。そこで、コーポレート・ガバナンス関連情報を報告書の形で集約し、東証のウェブサイトに一覧で常時掲載することとしています。
引用元:コーポレート・ガバナンス | 日本取引所グループ

コーポレートガバナンスは中小企業でも必要?

非上場の中小企業における、コーポレートガバナンスの必要性は極めて低いです。「経営者=株主」という場合は証券取引所の監視は及びません。しかし、将来的に上場を考える会社ならば、コーポレートガバナンス・コードに則った経営をするべきでしょう。

不祥事などに対する社会の目は非常に厳しくなっているので、自主的に体制を整えておいて損はありません。

日本と海外のコーポレートガバナンスの違い

日本では、コーポレートガバナンスの目標として「不正の排除」が一番になっています。一方、コーポレートガバナンスが一番に議論されて世界にその概念を広げたアメリカにおいては「株主の役割重視」という点が注目されているようです。

日本は「会社=経営者」のものという思想が強かったですが、アメリカでは会社は株主のものであるという考えが日本より前から遥かに意識されています。その結果「株主至上主義モデル」が生まれ、その結果1990年代のアメリカでは、アメリカ史上最も「強気なマーケット」が展開したといわれています。コーポレートガバナンスを守ることにより、企業の価値が高まり、活発な経済活動に繋がるという考えが日本に比べても大きいようです。

参考:
日本政策投資銀行設備投資研究所|コーポレート・ガバナンスの世界的動向
独立行政法人労働政策研究・研修機構|コーポレート・ガバナンスと雇用関係の日米比較

コーポレートガバナンス強化と社外取締役に関して

上場会社はコーポレートガバナンスを強化する目的から、社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきであるとしています。日本取引所グループによると、社外取締役を2名以上選任する東証一部上場企業は、コーポレートガバナンス・コード導入前の2014年には21.5%でありましたが、2019年には99.0%に達しているのです。

独立社外取締役を2名以上選任する上場会社(市場第一部)の比率推移

参考:日本取引所グループ|独立役員の選任状況

どんな人か適任?

社外取締役に選ばれる人は、経営経験者・公認会計士・税理士・弁護士などが多いようです。特に財務面をクリアにしていることをアピールしたいのであれば、公認会計士や税理士を選ぶと良いのではないでしょうか。経営者に対してイエスマンでは意味がないので、きちんと経営者に対しても意見が言える人が理想です。

社外取締役はどうやって選ぶ?

社外取締役は紹介により選ぶこともありますが、親しい仲ほど本音で意見が言えないというデメリットもあり、全く利害関係がない人の中から選ぶのが良いでしょう。社外取締役を含めたエグゼプティブ転職専用のエージェントもあるので、このようなサービスを利用することにより理想のスキルを持ち合わせた人材に出会えることができます。

ただし、日本では社外取締役になれるようなスキルを持ち合わせた人は少なく、そのような人は何社も掛け持ちをしています。優秀な人であるほど契約することが難しくなりますし、報酬額が高くなることは理解しておく必要があるでしょう。

今後社外取締役に求められる役割やスキルとは

社外取締役には、不正を許さないという強い正義感が大切です。社外取締役は月に数回出社すれば良いだけですが、会社が良くなるように真剣に改善点を考え自らの知識を最大限に活かしたアドバイスをすることが求められるでしょう。

また、社外取締役は株主の声を経営者に直接投げかけることのできる、会社と株主の架け橋的な存在です。株主が感じているであろうことを経営者にズバッと言うことが大切ですし、それが会社の価値が向上することにも繋がります。

経営者が間違っていたとしても社内の人間は人事評価を気にしてなかなかはっきり言えないものです。そんなときに経営者に対してきちんと意見が言える存在が求められますし、経営陣が気づいていない潜在的な力に気がつき後押ししてくれる存在は有り難いと思われるのではないでしょうか。

まとめ

コーポレートガバナンスの主な目的は「会社は株主のものである」という考えのもと、経営者を監視することです。そして、コーポレートガバナンスは強化することにより、株主は安心して投資できるようになるのです。

日本ではアベノミクスの重要テーマとして急速に整備され、社外取締役を2名以上選任する東証一部上場企業は、コーポレートガバナンス・コード導入前の2014年には21.5%から2019年には99.0%に達しています。

社外取締役には、経営者や弁護士などを選ぶことも多いですが、会計面の透明性をアピールしたいのであれば公認会計士や税理士が適任です。社外取締役を選ぶ際には紹介という手もありますが、エグゼプティブ向けの転職エージェントを利用するとスキルの高い人材を見つけることができるでしょう。

責任感が強く、経営者にきちんと意見できる人を選ぶことが大切ですし、それが結果として会社として良い方向へ進むことにも繋がります。

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