カスタマーハラスメントとは?実際の事例や企業が取るべき対処法を解説

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カスタマーハラスメントとは、カスタマーとなる「顧客」や「取引先」から悪質もしくは不当なクレームや要求を求められることで、ハラスメント行為の一つとして捉えられています。

日本では「お客様は神様」という言葉があり、そういう気持ちでお店や企業に過剰な要求を突きつける人が多くなっているのではないでしょうか。そこで今回は、カスタマーハラスメント、通称カスハラについて見ていきましょう。

データで見るカスタマーハラスメントの現状

まずはデータでカスタマーハラスメントの現状を見ていきます。

カスタマーハラスメントの推移

株式会社エス・ピー・ネットワークが行った「カスタマーハラスメント実態調査(2019年)*」という調査によると、半数以上にあたる55.8%の回答者が「直近3年間でカスタマーハラスメントが増えていると感じる」と回答しています。

ちなみに、回答者は「営業・販売、一般事務、専門職、総務・人事、カスタマーサポート、顧客管理・品質管理、技術・設計、情報処理システム、生産・製造等」の職種で働く「全国の20代から60代の男女」です。非常に多くの人が「直近3年間でカスハラが増えた」と感じているようですね。

カスタマーハラスメントの増加意識参考:カスタマーハラスメント実態調査(2019年)*

カスハラが多い業界は?

続いて、実際にカスハラが多い業種とはいったいどの業種なのでしょうか。実際にカスハラに遭いやすいのは、やはり接客業です。顧客と触れ合う機会が多い分、カスタマーハラスメント行為に遭う可能性が高くなってしまいます。

たとえば、スーパーやアパレルなどの小売業やレストラン、居酒屋などを経営する飲食業やサービス業は注意が必要ですね。また、接客業だけではなく、業界を問わず「カスタマーサポート」の仕事をしている人もカスタマーハラスメントに悩まされることが多いでしょう。電話越しだと相手の顔が見えない分、態度が横柄になる人もいますし、暴言を吐く人もいます。

企業の対応やマニュアル化はされている?

同調査によると、カスタマーハラスメントに対応するためのマニュアルを作成している会社は31.4%。わずか3割にとどまっています。17.1%が「作成されていないが作成予定である」と回答しており、企業も対応に苦慮している様子がうかがえます。

ただし、残りの5割以上は「作成されておらず作成予定もない」と回答しており、カスタマーハラスメントに遭っている企業の対応にはバラつきがあるようです。ただし、カスタマーハラスメントが横行すると離職したり、心を病んだりする人がふえるという人的リソース面でのリスクがあるため、企業も早めの対応を迫られることとなりそうです。

従業員を守る顧客対応マニュアルを作成している会社

 

カスタマーハラスメントの主な事例5つ

ここでは、カスタマーハラスメントの事例を見ていきましょう。

カスタマーハラスメントに「不当な要求」

3時間電話を切らない

とある金融機関でカスタマーサポートの仕事をしているAさんが辟易とした顧客の一人に、なかなか電話を切らない顧客がいました。電話を受けたそばから激怒していました。「どうなっとるんやお前のとこのサービスは!」と怒鳴り込みから入り、Aさんの対応に対しても「誠意が見えない」「本当に申し訳ないと思っているのか」「担当部署に連絡するとか言いながら、どうせ何もしないんだろう」などと繰り返し、クレームを突きつけます。

そこまではよくあるクレーム対応だと思っていたAさん。ベテランなので対応自体は問題がなかったのだそうですが、暴言がひどく「お前の声が気にくわない」「大した仕事もしていないくせに」などとAさん自身を否定するようなことを言われたのだそう。

なんとかクローズしようとするも「電話をすぐに切ろうとするなよ、失礼なやつだな」などと言われ、なかなか電話を切ってくれなかったのだと言います。最終的には3時間もその電話に付き合わされることになったようです。

「誠意を見せろ」と無茶な要求を求める

とある小売店で働いているBさんは、無茶な要求を繰り返す顧客からカスタマーハラスメントを受けたと言います。Bさんの勤務先は、ちょっと品質にこだわったものをそろえた高級スーパー。そこへやってきた50代くらいの男性が、Bさんがレジ担当のときに言いがかりをつけてきたと言います。

理由はレジの打ち間違い。すべて終わったあとにBさん自身で気付き、「お客様、申し訳ございません。一部の商品で打ち間違いがありましたので、再度清算をお願いしてもよろしいでしょうか」と声をかけたところ、急に声を荒げたのだそうです。

「打ち間違いなんてするな」とののしられ、挙句の果てには「誠意を見せろ」とすごまれたと言います。最初から具体的な要求をするわけではなく、「おたくの誠意っていうのは何なんだ」「お前らなりの誠意を見せろよ」と大きな声で要求。

打ち間違いで余計に払わせてしまった代金はすぐに返還したものの、それ以上のことを要求してきたのだそう。店長が出てきて対応するも「お前らの誠意はそんなものか」「誠意ってもんを知らんのか」と繰り返し絡み、困り果てた店長が「打ち間違いをした品物については全額返金する」と申し出ると「そんな甘いもんじゃダメだろう」「SNSに書き込んでやるからな」などと怒鳴られたと言います。

対面での謝罪と土下座を要求

とある化粧品メーカーで、カスタマーサポートの仕事をしているCさんもカスハラの被害に遭ったことがありました。電話の内容は「到着時点で化粧品が入っているビンが割れていた」というもの。

すぐにお詫びし、あらたにもう1品送ると言ったものの「すぐ使いたかった」「いますぐ持ってくるべき」「普通は対面で謝罪しに来て土下座するべき」などと文句を繰り返しました。1時間にわたる電話と、対面での謝罪、土下座を求められ、最終的には「あなたの名前は?」と名前を聞かれて不安になったそう。

セクハラ発言と暴言をひたすら繰り返す

こちらもコールセンターで働くDさんの話です。不動産会社のコールセンターで働いているDさんのもとに、何度も繰り返し電話してくる顧客がいました。なぜか毎回、Dさんのことを名指しで指名してくることもあり、その都度「スタッフの変更はできかねます」と答えるとすぐに電話を切るのだそう。

たまたまDさんが電話を取ったときには「今日は何色の下着を着ているの?」「前に性行為をしたのはいつ?」などとセクハラとしても度を越えた発言を繰り返し、Dさんが丁重に「そういったご質問にはお答えできかねます」と回答すると激怒。

  1. 「お高くまとまってるんじゃない」
  2. 「どうせブスなんだろう」
  3. 「お前みたいなヤツを嫁にもらう男はいない」

などと暴言を繰り返します。上司の許可を得て「当社のサービスや製品とは関係のないお話が続くようですので、お電話を切らせていただきます」と電話を毎回切るのだそうですが、そのあとも何度も何度も電話してくるのだそう。

「子どもがやったことだから」とうやむやにする

最後は、とあるレストランで起こった話です。Eさんはカフェレストランを経営しており、普段から親子連れでにぎわっていました。そんな中、子どもを連れて女性2名が来店。子どもの世話をせずに放置し、2人で食事やおしゃべりを楽しむ様子に内心ひやひやしていたといいます

しかし、事件は起こりました。子どものうち一人が転倒し、ほかの顧客のテーブルにぶつかったはずみでテーブルに置いてあったワインボトルが倒れ、割れて中身がこぼれてしまいました。テーブルに座っていた二人の洋服は汚れ、料理もワインがこぼれて台無しに。おまけにお店のお皿も割れてしまったのだそう。

そんな状況を見て、「子どものやったことだから仕方ない」と繰り返す母親たち。自分たちはクリーニング代も料理代もワイン代も支払う気がなかったようで、

  1. 「テーブルとテーブルの間が狭い」
  2. 「子どもだったら遊ぶのは当たり前」
  3. 「ワインクーラーに入れておかないのが悪い」

などと言い訳を繰り返す母親に呆れ、Eさんは被害にあった二人に丁重にお詫びし、クリーニング代を支払うことにしたのだそう。

 

顧客はなぜ悪質なクレーマーとなってしまうのか?

ではなぜ、顧客は悪質なクレーマー化してしまうのでしょうか。理由はいくつかあります。

サービス品質の当たり前化

1つはサービスの品質が上がりすぎてそれを当たり前だと思い込んでしまっている人が多いという点が挙げられます。

企業努力もあって高品質なサービスを提供できているのですが、それを「当たり前」のことだと思い込み、ほかのお店やほかのサービスを利用したときに「なぜこんなこともできないのか」「なぜこれが当たり前ではないのか」と怒りを覚えてしまうことがあります。

個人個人のモラル

また、個人個人のモラルの問題もあります。最近ではSNSを通じて「〇〇したら全額返金された」とか「クレーム入れたら割引券をもらった」などというネタを入手し、それと同じことを要求すれば自分も返金や割引が受けられるのではと考える人もいるようです。これはこれで非常に悪質ですが、個人個人のモラルの問題でもあります。

ストレスフルな日本社会も背景も少なからず原因

さらには、ストレスフルな日本社会も背景にあるでしょう。職場や家庭で溜め込んだストレスのはけ口として、自分よりも立場が弱いと考えた相手に暴言を吐くということもあります。その心の奥底には「お客様は神様」という思い込みがあり、自分が顧客の立場であるうちは何を言ってもいい、何を求めてもいいという考えがあるようです。

高齢者のカスタマーハラスメントも問題

また、近年は高齢者からのカスタマーハラスメントも話題となっています。定年退職を迎え、会社に行かなくてよくなった高齢者が時間を持て余しているとのです。

会社で働くこと以外に生きがいが見つけられなかったり、友人との交流を避けてきた人は老後孤独感に苛まれやすく、そういったストレスからカスタマーハラスメントに走る高齢者も少なくありません。

自分の経験からアドバイスをする、という気持ちでカスタマーセンターに長々と説教の電話をするとか、その企業をよくするためにげきを飛ばすつもりで暴言の電話をするなどが典型例と言えそうです。

 

悪質なカスタマーハラスメントを防ぐために企業がとるべき対処法7選

悪質なカスタマーハラスメントを防ぐために、企業としても対策が必要です。企業として対策を取らないと、悪質な顧客による営業妨害を受けたり、従業員の精神的な健康が損なわれたり、従業員が離職する原因になったりします。まだ対応できていない場合、早急な対応が求められます。

会社としてのカスハラへのスタンスを決める

まずは、会社としてカスタマーハラスメントに対するスタンスを定めることが重要です。顧客に対するサポートはもちろん大事ですが、カスタマーハラスメントを許容することはさまざまなリスクにつながります。会社のスタンスとして、カスタマーハラスメントにどう立ち向かうべきかを決め、関係部署に連携することが非常に重要です。

SNS等の二次災害対策も検討

部署ごとに対応にバラつきがあると、それもそれで問題が深刻化しやすいうえにSNSに書かれて二次被害を誘発する可能性もあります。また、どこまでがサービス改善等に繋がる「クレーム」なのか、どこからか「カスタマーハラスメント行為」なのかという線引きをはっきりさせることも重要です。

線引きをきちんとして、「こういう場合は私たちが丁重に扱わなければならない大事なカスタマーである」もしくは「こういう場合はカスタマーハラスメント行為として、エスカレーション対応にしてもよい」などという判断が自分でできるようになることが需要です。

悪質な行為は記録を残しておく

悪質なカスタマーハラスメント行為が見られたら、すぐにその場で記録できるようにしておきましょう。コールセンターであればもれなく録音すること、小売店や飲食店ではきちんと防犯カメラを設置すること。これらを徹底し、悪質な行為を記録に残しておきましょう。その際、対面で接客する場合には見た目の特徴や要求内容と前回の対応内容を全スタッフに周知しておくことも大事です。

特徴がわかれば警戒することもできますし、来店したときにさっと対処法を確認し直すこともできます。また、要求内容とその後の対処法があれば、その顧客がどういう要求をしてくるか心の準備もできますし、要求をきっぱり断るのか、それとも要求を飲むのかなどのスタンスがわかっていれば対応に困ることもありません

スタンスを一貫させることもポイント

取るべき対応がわかっていれば、「スタッフによって対応が違う」とか「前はこうしてくれた」という新たな火種を生まずに済みます。「前回は~してもらった」と言われたときに、「前回そうしたのであれば今回も同じように対応すべきなのかな?」と悩むこともあると思いますが、その真偽がわからないと困ってしまいます。

悪質な顧客は、相手がオロオロしていると余計につけ上がります。オロオロして付け込まれないためにも、ノウハウを共有しておくことは非常に重要ですね。

カスハラを助長させない話し方を知る

カスタマーハラスメントを助長させないためのヒントを知っておくことは非常に重要です。たとえば、声のトーンや話し方、言葉遣いなどで相手の気持ちを落ち着けることもできます。声のトーンは意識して低めに話し、話し方はあえてゆっくりにします

それだけでも相手のヒートアップした気持ちを落ち着ける効果があります。

また、言葉遣いは丁寧を心がけて相手からダメ出しを食らう可能性をできるだけ減らします。些細な言い方ひとつで相手の心の火に油を注いでしまうこともあるので、十分注意が必要ですね。「ですから」や「とはいえ」など、逆ギレととらえられがちな言葉は避けます。

また、相手にもよりますが、まともに話をする前に「まずはお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」と尋ねると、相手がトーンダウンするのを感じられるでしょう。聞き出せたら「〇〇様は~」「〇〇様のおっしゃることはわかります」などと、名前を何度か呼ぶことで相手も冷静さを取り戻しますし、自分の名前を呼んでくる相手に強気では出られなくなります。

クレームをカスハラに発展させない方法を学ぶ

カスタマーハラスメントの中には、最初はただのクレームだったけれど対応の仕方が悪くカスタマーハラスメント行為に発展してしまうこともあります。この場合、初期のクレーム対応の時点で相手の気持ちを落ち着けておくことが重要です。

クレーム対応に慣れたスタッフを増やしたり、クレーム対応についての研修を繰り返し行うことでクレームからカスタマーハラスメント行為に発展するのを防ぐことができます。クレーム対応をステップ化し、謝罪からクローズまでの一連の流れを明文化してスタッフに共有しておくだけでもスタッフの心構えが違ってくるでしょう。

どういう犯罪行為にあたるかを理解する

カスタマーハラスメント行為は、内容によっては犯罪行為になります。たとえば、大声で威嚇したり暴言を吐いたり、相手を脅すようなことを言ったりする場合は脅迫罪になりうる行為ですし、こちらから退店を求めているにもかかわらずお店に不当に居座るのは不退去罪となることもあります。

こうした知識を事前にスタッフの間で共有しておくことで、心理的にも落ち着いて対応できるようになります。「何とかしなくては」とか「お客様をないがしろにできない」という思いが強すぎると、落ち着いて対応することができなくなってしまいます。

マニュアルを整備する

カスタマーハラスメント行為に対応するためのマニュアルを整備することも非常に大事なことです。マニュアルを整備することで、会社のスタンスが従業員に共有され、浸透するというのも重要なポイントです。

マニュアルがあることで安心して対応することができるようになりますし、社員教育の一環としてマニュアルを整備することは非常に意義のあることです。もちろんそこには、先述したようなクレームをカスハラに発展させない方法やカスハラを助長させない方法を知ることができるように書いておくべきです。

カスタマーハラスメント行為の中でもどういう行為がどういう犯罪行為に該当するかも記載しておくといいでしょう。従業員が安心して対応できるというのは一つの大きなメリットです。

厚生労働省もカスタマーハラスメントを社会問題視

『職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会』という厚生労働省が行う話し合いの場においても、カスタマーハラスメントは問題視されており、『カスハラ』の名称を広く世に認知させていくことが必要だとされています。

顧客や取引先からの悪質な迷惑行為への対応については、事業主が顧客に対してあらかじめ悪質な迷惑行為をしないよう直接働きかけることは難しくとも、雇用する労働者に対して取引先の労働者等に対して悪質な迷惑行為をしないよう周知・啓発することは可能であり、まずはそうした取組から進めるべきではないかとの意見が示された。

さらに、自身が顧客の立場となる場合も含め、職場の内外を問わず、他者に対して迷惑行為をしてはいけないという社会認識を形成していくことも重要であるという意見も示された。加えて、顧客や取引先からの悪質な迷惑行為が社会的な問題になっている状況を踏まえれば、顧客や取引先からの悪質な迷惑行為の問題に対応するためには、事業主に対応を求めるのみならず、「カスタマーハラスメント」などの名前をつけて周知・啓発を行うことで、社会全体で機運を醸成してくことが必要であるという意見が示された。
引用元:職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会

接客にあたる従業員に対して研修を行う

マニュアルの整備と同時に進めたいのが、従業員向けの研修です。マニュアルだけではわからない、実際の事例を紹介しながら研修を行うことも有効です。なんの研修もなしに、急に大声で暴言を吐かれたり、電話を取った瞬間から怒鳴られたりすると恐怖心が先立ち、冷静に対応できなくなることもあります。

そうならないためにも、実際の事例を聞いて「こういうケースもあるんだな」と心得ておいてもらうことも大事です。

また、カスタマーハラスメント行為に対応するときの見本を見せたり、ロールプレイングで対応時に言葉が詰まらないように練習しておくのもいいでしょう。スタッフが自信を持って対応できるのが一番ですが、実際の事例を聞かせることでスタッフの心構えをつくっておくことも大事です。「こういう人もいるんだな」というのがわかっていると、冷静に対応できます。

まとめ

今回はカスタマーハラスメント行為の原因や事例、対処法についてご紹介しました。最近増えているというカスタマーハラスメント行為は、企業にとっては大きなリスクを言えます。人的リソースを失う可能性もありますし、適切に対応しないとSNSに書かれて会社のブランドに傷が付くこともあります。

十分に注意して対応すべきであるということを忘れないようにしたいものですね。

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